フリーランス ライター 臺代裕夢

過去の代表的な事例紹介(カンロ飴/ひと粒のメッセージ)

カンロ飴 発売60周年記念
ひと粒のメッセージ

せっかく公式HPを開設したので、いくつか、過去の代表的な事例をご紹介したいと思います。
まず最初は、小冊子『ひと粒のメッセージ』。
これは、カンロ飴の発売60周年を記念して製作されたもので、その製造方法や歴史、阿川佐和子さんによるエッセイなどが収録されています。
『Discover Japan 2015年10月号 Vol.48』に綴じ込まれたほか、60周年記念イベントの会場などで配布されました。

この小冊子のなかで僕が担当したのは、ひと粒小説『琥珀色の風景』。
カンロ飴と家族の絆をテーマにした短編小説を書いてほしいという依頼でした。
小説家でもないフリーランス ライターにこのような仕事がくることはまれですが、幼い頃から何千冊と小説を読んできて、かつ、趣味でも小説を書いていることから、喜んでお引き受けしました。
全4パターンを提出し、いちばん最初に思い浮かんだストーリーが採用されました。
以下に、全文を掲載しておきます。

 

ひと粒小説
『琥珀色の風景』

「父ちゃん、あめ玉ひとつちょうだい」
この春小学3年生になった息子は、書斎に入ってくるなり、なにかをこらえているようなしかめっ面で言った。いつも仕事のときになめているあめ玉をひとつ渡してやると、両端がひねられた包みを引っ張って琥珀色の中身を取り出し、口に含んでとつぜんぽろぽろと泣き始める。
ぽろぽろ、ころころ、ぽろぽろ、ころころ。
少し落ち着いた頃合いを見計らって、私は息子に声をかけた。
「学校でなにかあったのか?」
「ケンカした」
息子が口にしたのは、クラス替えをしてから新しくできたという友達の名前だった。
「でも、泣いてると母ちゃんが心配するから」
なるほど。いつのまにか、お前も立派に男の子やってるんだなぁ。私はそれ以上なにも言わず、気の済むまでそっとしておいた。
明くる日の夜、息子はまた書斎にやってきた。
「父ちゃん、あめ玉みっつちょうだい」
「なんだ、またケンカしたのか?」
「ちがうよ。仲なおりしたから、あいつにもあげようと思って」
息子はにっかり笑って手を出してきた。
「でも、みっつ目は誰にあげるんだ?」
すると息子はぱっと顔を赤くして、「自分でふたつ食べるんだよ!」と慌てて部屋を出て行った。こりゃあ、好きな子でもできたか。
私は作成中の資料を保存し、まんまるなあめ玉をふたつ持って、妻のいる台所へ向かった。